「お前…どこを通ってきたらそんな風になるんだ?」


               教室に着くや否や、日吉くんがそう言った
               何のことかわからず、首をかしげていると、長太郎くんが笑いながら手を伸ばす


               「ちゃん、髪に木の葉がいっぱいくっついてるよ」

               そう言いながら取ってくれる
               確かに、とってもらった木の葉はいっぱいだった


               ホップ、ステップ…?





               「あー…そっか…あの時に」


               今朝も、お兄ちゃんが運転する自転車の後ろに乗って登校してきたんだけど、
               自転車置き場でお兄ちゃんと別れた後、事件は起きた


               「宍戸さん、ちょっと来てくれる?」

               そう言って、校舎裏に連れて行かれた
               そこからはベタな展開
               あたしもあたしである程度予想はしていたので、特に怖くはなかった


               「ちゃん…もしかして、」
               「何でもないよ、大丈夫!ちょっと、転んだだけだから…」

               長太郎くんの真っ直ぐな瞳に見つめられていると、何だか落ち着かなかった
               慌てて自分の席へ座り、視線を逸らす
               そんなあたしを、後ろから眉をひそめて見ている日吉くんを知らずに









               「え、これ全部ですか?」
               「そうよ。こっちの倉庫の工事が終わったから。
                一人じゃ大変だろうけど、私はレギュラーのお世話があるからね」

               主に景吾の、と付け足す関口さんから紙を受け取った
               そこには、これから体育倉庫に行って取ってくるものが大量に書かれている
               何でも、男子テニス部専用の倉庫が出来たらしく、そこに体育倉庫にあるものを運ぶという話らしい


               「わかりました、行ってきます」
               「くれぐれも他の部の部員に迷惑かけないようにね」
               「はーい」

               体育倉庫へは迷わず着いた
               こんなに広い学校なのに、ちょっとさびれた所に建っているのはよくわからないが、
               半開きになっている鉄の扉を通ると、埃っぽい空気を感じた


               「えーと…テニスボール50個入りの箱、二箱は…どこだろな…」


               持って来た懐中電灯をつけると、その明るさに少し安心した
               それらしき箱を見つけ、しかし背が届かなかったので脚立を探したときである


               「お、宍戸妹じゃん」
               「…?あ、がっくん!」


               向日岳人、その人が姿を現した
               ジャージ姿であるので既に部活に来ていたのだろうか


               「お前、こんなとこで何やってんだよ」
               「ちょうど良かったー。がっくん、あれ取ってあれ」
               「それは別に良いけどよ…ここ、あんまり入らないほうがいいぜ」
               「え、なん…」

               
バァンッ!!!

               突如、大きな音が響いた
               後ろからさしていた日の光が無くなり、
               向日と、振り返れば扉が閉まっていた


               「がっくん…閉めた?」
               「な訳ねぇだろ!俺、今ここで箱取ってただろ!」


               箱をに渡し、慌てて扉に駆け寄る
               がたがた、と音が響くだけでびくともしなかった


               「やべぇ…鍵、かかったみたいだな…」
               「え、えぇ!?な、何で鍵まで…」
               「ここさ…幽霊、出んだよ…」
               「え…」


               がたん、と懐中電灯が音をたてて床へ落ちた
               それを拾い上げながら向日は続ける


               「女の子がすすり泣くような声が聞こえてきたり、窓もねぇのに倉庫がガタガタいったり…」
               「ひゃ…」
               「だからカギが勝手に閉まんのも…当たり前…、
                な訳ねーじゃん!ははっ、何ビビってんだか」
               「も…もう!本気で怖かったんだからね!」
               「あはは。って笑ってる場合じゃねぇー!!」






















               「がっくん」
               「…何だよ」
               「お腹空いたね」
               「おぉ」
               「こんなことなら、鞄の中にあるチョコ持ち歩いとけば良かったなぁ…」
               「それよりも、今何時なのかわかんねーのがな…。
                部活終われば宍戸がお前捜すだろうけどよ…」
               「それよりもじゃないでしょぉぉ!」
               「おわっ…ほ、本気で怒んなよ!」
               「どうしよう…このまま出られなかったら…もしかして…餓死…」
               「なぁ、俺の話聞いてたか?宍戸が捜すって、きっと」
               「こんなことならお兄ちゃんともっとぷよ○よすればよかった…」
               「お前の後悔はそれかよ」


                窓が無いので、相手がどこにいるのかも何となくしか解らない
                そっと手を伸ばせばさらさらと心地よいの髪に触れて、慰めるように頭を撫でてやった
                にとって、それが逆効果
                思ったよりも頼りになる向日に安心してか、何だかじーんときてしまった


               「ふぇっ…うっ…」
               「う…?お、おい!な、何でそこで泣くんだよ!」
               「ごめ…何か…安心して…一人じゃないんだなって…」
               「あー…」


               ぎゅうっと向日に抱きつくと、わんわんと泣き出す
               女の子に抱きつかれて泣かれるなんてハプニングは今まで無かったので、
               どうして良いか勝手がわからず、何となく宙に彷徨っていた手を組んだ


               「お前…さ。本気で、マネージャーになるつもりか?」
               「ふぇ…?」
               「…正直、お前が宍戸の妹だとか、そんなことはどうでもいいんだ。
                それぐらい、俺にとってお前がマネージャーになろうがなるまいがどうでもよかった。
                けど…お前は、その辺の女と訳が違うみたいだしな…」
               「ど、どうでもいい…」
               「だーっ!過去だっつーの!過去!よく聞けよ」
               「がっくん…?」
               「つまり…協力してやるよってこと」


               暗くてはっきりとはわからなかったが、
               にやっと得意げに笑ったような気がした











               あとがき
                  また久しぶりになりました。
                  ちょっぴり男らしいがっくんです。
                  がっくん編も2編でいきます!

                  でも、がっくんはどうして箱を取れたんでしょうか…?(笑)